6.見えない人の文字の読み書き
ぽかぽか茶屋に、このコラムを数部印刷して皆さんに読んでもらえるよう置いてもらっている。また、フェイスブックでも紹介してもらっている。一人でも多くの人に読んでもらえたらと願っている。
ところで、この印刷物は、見えない私が作成したものだろうか? 誰がどのようにして印刷したものなのか?そうした疑問がありそうだ。私が概ねの内容を言って、家人がそれを書き取っていると考えている人もおられるだろう。
1990年代に一般のパソコンが普及した。それに合わせて視覚障がい者用として読み上げソフトというのが開発された。キーボードを叩いて文字入力すると音声で知らせてくれる。ただ、音声によって漢字変換する際、よほど注意しないと誤変換してしまうことがある。私の書いた文章を見えている人に校正してもらうと「なんで⁈」という文字列が飛び出してくることがある。見慣れている人に言わせれば「想像はつくし面白いですよ」なんて言われたりする。
弱視の人にとっては、文字の大きさや画面のバックの色と文字の色など、その人に応じた拡大率・色を調整して、個々がもっとも見やすい環境を設定するようにしている
さて、ワードファイルとして文章を作成し、それを印刷する。印刷機は音声で案内してくれないが、パソコンからは手順をふんで枚数や裏表の設定もしてエンターキーを叩く。しかし、印刷機は「ゴトッ」と音がしても動いてくれないときがある。どうなっているのかの状況が分からない。家に見える人がいなかったらお手上げ状態となる。見てもらうとインクがなくなっていたり、何らかのトラブル表示が出ていることがある。こうした状態を知らせてくれる音声対応の印刷機があるのかどうか?正常に動いてくれるときは何の問題もなく一人で対処できる。
パソコンでは、ネットを使って情報を入手することができる。メールもする。エクセルを使ってデータ管理もする。住所管理ソフトもある。視覚障がい者に使いやすいように作られたソフトもいろいろある。しかし、それらは通常のものからみるとずいぶんに高額だ。
パソコンに精通している視覚障がい者は、そんなものは使わなくても通常のソフトを読み上げソフトだけで対応しているが、私を含め、多くの視覚障がい者は容易に使えるものを負担はあっても使うことになる。
少数派であるがゆえの経済的負担というのが、こういうところからも生じてくる。