「あゆみ」
1983年3月
京都盲福研便り第2号より
4.片手笛
前にTVで見た話です。愛知県に夢工場というボランティアグループがあります。
先天性四肢障がいで片手が不自由な小学生が、音楽の時間みんなと一緒に笛を吹くことができない。しかし、本人はみんなと笛を吹いてみたいと希望している。というので、笛を片手でも吹けるように、改造しているグループです。
彼らは、今までの成果を見てもらおうと、その改造笛を持って東京補装具研究所を訪ねます。しかし、「残念ながら、この笛では完全な音が出ない。もしそれで子供たちの夢を壊すようなら、初めから無い方が良い」と言われ、グループには迷いが生じます。まず音を出すことを目標においても良いのではないか。それでも研究所で言われたことが気にかかります。
そこで、彼らは今まで笛を作ってばかりいたことに気づき、実際に笛を持った子供がどうしているのか見にいくことにしました。大分県の女の子のところです。家では上手に吹いてくれましたが、学校ではみんなに合わせて吹くことができません。しかし、女の子のお父さんは初めて笛が吹けたことを涙ながらに語ってくれました。
彼らは、先天性四肢障がい父母の会とともに、この「片手笛」の普及に努めてます。そこで、教育課長ですら、そういう子が現に学校で学んでいることを知らなかった、という実態が分かりました。
今彼らはみんなに知ってもらうこと、特に行政の側によく知ってもらおうと活動しています。とともに、全国に片手笛を作る仲間を増やそうと飛び回っています。完全な笛はできないけれど、まず音を出す喜びをできるだけ早く子供たちに知ってもらいたいと。
以上の話はどのボランティアグループにも共通する問題を含んでいると思います。特に完全さを目指すけれど、それができない場合にはどうしたら良いのか、常に問題になることだと思います。